2. ギターラ(Guitarra: ポルトガル・ギターの呼び名)を学ぶ助けとして、ここでは略譜(シフラ:cifra)や運指表記譜(タブラチュア: Tablature)を利用いたします。 タブ譜(タブラチュア)はギターラのコースを表す6本の線を用います。一番上の線が第1コースに相当し、次が第2コース、以下続き、第6コースにあたる最後の線まで至ります。

 各線に数字を置くことにより、求む音を得るために押すフレットの番号をあらわす事ができます。 ゼロ(0)は開放弦(フレットを押さえないで得る音のポジション)、1は、最初のフレット、2は第2番目、それぞれ続いてゆきます。このシステムはフィンガーボード上の具体的な場所知るのに有益です。 それ自体では、まだ不十分です、というのは、このままでは、音符の長さ、リズム、表情、その他音楽上の重要な表現上の性格を表すに至ってないからです。 しかし、一般的な表記法とともにタブ譜を使うことは、ギターラによる音楽を教授したり学んだりするのに最適な方法です。

一般的な表記法による下降ニ長調音階、下はフレットの位置を示すタブ譜

上のサンプルでは、各弦は丸で囲まれた数字で表されていることをご注意ください。

3. 左手は、指板上の弦を押さえるために使います。他のフレット楽器と同じく、フレットに近い所でで弦を押さえるのが良いでしょう。大体において、指の先で押さえるのが最上です。伝統的に、リスボン奏者は6弦を押さえるのに親指を使います。近年、左手の親指の使用をいくつかの論争がありました、と言うのは、親指を使うと左手と左腕を無理な形で使うことになるからです。(この考えは偉大なスペイン人ギター奏者の中にも支持されています)
これに対して、親指派は、伝統的な方法で指をフレットにどかす届かす事ができるのと、親指を使わない場合以上に異なった指使いの可能性をもたらすのだ、と反論します。 私自身元来クラシック・ギター奏者として訓練を受けたので、左親指を使うのは抵抗がありました。しかし、ルイス・ペネード(Luis Penedo)の助言により、親指を試みました。しばらくの間、そうするのは困難でした。実際、この手法をマスターし、今やあるコード(和音)を弾くのに有益と思えるようになりました。 伝統的に、左手指は以下の数字で示されます:1=人差し指、2=中指、3=薬指、4=小指 左手親指は一般的な表記法がありません。パウロ・ソアレス(Paulo Soares)は親指にはロ(0)を使います、私はこれは意味にかなっていると思います。

4. 右手の親指やその他の指は、以下のアルファベットで示されます: p,i,m,a---この文字は、polegar(thumb)=親指、indicador(index)=人差し指、medio(middle)=中指、anular(ring)=薬指
 リスボン・スタイルでは、薬指は決して使われませんが、中指は時折使われます。 ペドロ・カルディラ・カブラルの演奏を見ると、それ程中指を使用しているように見えませんが、彼曰く、偉大なジャイメ・サントス(Jaime Santos)は中指を使用していたとの事。また彼(カブラル)の著書(1999:320)で、“ドイス・デドス”(dois dedos)=2本の指と呼ばれる古い演奏技術について述べています。 これは、人差し指と中指で交互にフリー・ストロークでメロディー・ラインを演奏する方法です。

 中指がめったに使用されないけれど、リスボン・スタイルの右手技術は親指と人差し指のの使用に基づいていると正確に言って良いでしょう。基本的なリスボン・スタイルの技術の中に、“フィゲータ”(figueta)と“デディーリョ”(dedilho)があります。 フィゲータとは、親指と人差し指を交互に使い、典型的な形としては、親指はレスト・ストロークで、人差し指でフリー・ストロークを弾きます。デディーリョは、人差し指でメロディー・ラインを奏でる方法です。 この奏法では、人差し指で最初の弦を弾き、指が弦を越したら指を方向転換させ、指の爪の裏でその同じ弦を弾くのです。この奏法では非常に早いスピードが得られます。 (私は、19世紀初旬のスペイン・クラシック・ギターの文献に同様の演奏方法デディーリョについて読んだことを思い出しました。そのことを、ここで申し上げておくべきでしょう) 人差し指の上下の運動が素早く、連続的に同じ音に強調される時、それは“トゥリナード”(trinado)と呼ばれる奏法で、動詞 ”trinar”=震わせる、に由来します。この装飾的な奏法はリスボン・スタイルの非常に特徴的なものです。だいぶ以前には多くの奏者はギターラをむき出しの指の爪で演奏していたの対し、現在ではほとんど全ての奏者は“ウーニャ”(unha)と呼ばれる、 硬いビニールのような合成材/プラスティックで作られた特殊なフィンガー・ピックを使います。出来合いのフィンガー・ピックを買うことはできますが、プロの奏者は通常自分自身で作ります。 少し練習すれば、あなたもとても良いウーニャが作れます。必要なのは、ハサミと、小型の工作用の良く切れるナイフ、何枚かの紙やすり(200,400あるいは600度)、0.7-0.8mmの硬質ビニール板。 単に必要な輪郭を切り取り、非常に暑い湯の中に入れてウーニャを曲げ、熱いうちに折り曲げていきます。それから、指の爪が入るようにウーニャの内部を切り取ります。 最後に、演奏しやすいようにウーニャの端を、紙やすりか爪ヤスリで調整します。ウーニャを装着する最上の方法は、6mm幅で100mm長さの外科用接着テープで留めることです。


外科用テープにて固着されたプラスティック製"べっ甲"柄ウーニャ

 ウーニャにとって最もふさわしい材料は本べっ甲です。これは特別許可なしには国際的に持ち出しすのが不法となっているために、手に入れるのは非常に難しくなっています。時には、骨董店で、古いタバコ・ケース、化粧ケース、ビクトリア時代の女性用ハンドバッグ、茶道具、装飾品等に一部使われているもを見出すこともあります。もし、こうした本べっ甲に出会う機会がなくても、アコースティック・ギターに使われているプラスティック製の人工べっ甲を利用して、ウーニャを作ってみては如何でしょうか。時には、ウーニャとして使うには十分な硬さや寿命を具えた材質を見つけることができない場合もあるでしょう。こうした良い材料を手に入れることのできない時、古いクレディット・カードを利用することで知られる奏者もいます。しかし、一般に利用するには、(プラスティック・シートを扱う業者の方より購入可能な)硬いビニールが妥当な材料でしょう。


上: 白の硬いビニールでできた人差し指と親指のウーニャ
下: 外科用テープを付けてある、ピックガード用の本べっ甲から利用されたウーニャ(人差し指と親指)

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ロナルド・ルイス・フェルナンデス(RonaldLouis Fernandez)著
リスボン・タイプ ポルトガル・ギター演奏法 (C)2000 原著

翻訳:戸神敏彦(M.G Company,Inc. = Guitar-Harp.com
ご質問:お気軽にお問い合わせください [メール]
M.G Company
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